【医師解説】妊娠中の花粉症治療-使える薬と薬に頼らない花粉症対策

妊娠中の花粉症治療

「妊娠したけど花粉症の薬は飲めるの?」
「赤ちゃんに影響はない?」
「薬に頼らない花粉症治療を知りたい!」

春の足音が近くなると増えてくるのは“くしゃみ”“鼻水”“鼻づまり”など、花粉症にお悩みの患者さんです。
妊婦さんは女性ホルモンの影響で花粉症が悪化しやすいだけでなく、妊娠・出産をきっかけに花粉症を発症する方も少なくありません。

一般的に妊娠中の薬は赤ちゃんに影響を与えるリスクが高くなるため、慎重に使用しなければなりません。
では、妊娠中の花粉症治療はどのような方法があるのでしょう。

本記事では2023年版鼻アレルギー診療ガイドラインを元に、妊娠中の花粉症治療を解説します。
妊娠中の方だけでなく、妊娠を考えている方、身近に妊婦さんがいる方にも参考になりますので、ぜひ最後までお読みください。

妊娠中は花粉症が重症化しやすい

妊娠中の花粉症の重症化

妊娠をきっかけに、大きく変化する女性ホルモンのバランス。
なかでも妊娠をきっかけに分泌が増えるエストロゲン(卵胞ホルモン)は、妊娠の維持だけでなく鼻の粘膜や血管・自律神経にも影響を与えています。

エストロゲンの分泌が多くなる妊娠20週(中期)以降に、鼻水や鼻づまりの症状がひどくなり、出産後に症状が改善するのが一般的です。
知らず知らずのうちに変化する女性ホルモンの影響で、妊娠後に花粉症の症状が気になる妊婦さんは少なくないのです。

妊娠中にできる”薬を使った”花粉症対策

妊娠中にできる”薬を使った”花粉症対策

花粉症対策といえば、医師の処方薬や市販薬の内服や点鼻・点眼など、薬を使用した方法が一般的です。
けれども、妊娠中に薬を使用することには赤ちゃんへのリスクが伴いますし、できるだけ避けたいというのが妊婦さんの本音ではないでしょうか。

つらい花粉症の症状はどうにかしたい…。
では、妊娠中に使える花粉症対策は存在しないのでしょうか?

ここでは、妊娠中にできる”薬を使った”花粉症対策を、耳鼻科専門医がわかりやすく解説します。

妊娠中に使える花粉症治療薬は限られている

妊娠中に使用できる花粉症治療薬の種類は限られています。

なぜなら、妊婦さんが服用したり使用したりした薬が、胎盤を通して赤ちゃんの血液中に入ると赤ちゃんの成長・発達に影響を与える危険性があるからです。

妊娠前期は薬を使った治療はおすすめしない

妊娠4~7週は神経や心臓・消化器・手足が作られるとても大切な時期で、薬による影響を受けやすいため、原則薬を使った治療はおこないません。
妊娠8週~16週にかけても神経や心臓・消化器・手足が作られるため、この時期も薬を使った治療は避けます。

妊娠17週以降は、赤ちゃんの奇形の心配はなくなる時期ですが、薬の種類や量によってはへその緒や胎盤の血流が悪くなり、赤ちゃんの成長・発達に影響を与えるリスクがあります。
そのため、この時期も薬を使った花粉症治療には慎重になる必要があるのです。

妊娠中期以降は使える薬もある

妊娠中期以降になると、花粉症治療に使える薬の種類が増えます。
とはいえ、服用したり使用したりした薬の成分は胎盤を通して、赤ちゃんの血液中に入ることに変わりはありません。

妊娠中期以降だからといって、赤ちゃんの成長・発達に影響を与えてしまう可能性はゼロではないのです。
妊娠中期以降の薬を使った花粉症治療では、安全性が確認されている一部の内服薬や、血液中に成分が移行しにくい点鼻薬や点眼薬などの局所用薬を使用します。

オーストラリア医薬品評価委員会の分類基準によると妊娠中期以降に服用できる薬には、抗アレルギー剤のポララミンやレスタミン、ペリアクチンなどがあります。
これらの薬は症状に応じて選択する必要がありますので、妊娠中の花粉症治療でお悩みの方はぜひ当院へご相談ください。

出産後・授乳中の花粉症治療はどうしたらいい?

出産後・授乳中の花粉症治療

出産後・授乳中も、服用した薬は血液を介して母乳中に移行します。
そのため、出産後・授乳中も薬を使わない花粉症対策が一般的です。

どうしても薬が必要な場合には、局所用薬や内服薬を使用しますが、妊娠中とは異なる薬が推奨されています。
「妊娠中に大丈夫だったから…」と自己判断で薬を使わないようにし、ぜひ当院へご相談ください。

妊娠中にできる”薬を使わない”花粉症対策

妊娠中にできる”薬を使わない”花粉症対策

妊娠前とは異なり使用できる薬が限られる妊娠中でもできる、薬を使わない花粉症対策をご紹介します。
花粉症の症状にお悩みの妊婦さんは、ぜひ参考にしてください。

体調を整える

花粉症の発症や症状の程度の差には、身体の免疫機能が関与しているといわれています。
普段から規則正しい生活を心がけ、よく眠り、栄養バランスの整った食生活と、適度な運動をすることで、免疫力を正常に保つことができます。

ママと赤ちゃんにとって安定したマタニティライフを送るためにも、体調を整えることは重要ですので、できることから一つずつ始めてみましょう。

徹底的に花粉を避ける

花粉症の症状を軽減するためには、花粉との接触をできるだけ避け、体に侵入する花粉の量を減らすことが重要です。

外出するとき・花粉の飛散量が多い晴れた日、風邪の強い日、昼前前後や夕方の外出は避ける
・マスクを着用する
・コンタクトより眼鏡を使用する
・帽子をかぶる
・花粉が付着しにくい綿やポリエステルの服を着る
家に帰ったとき・建物に入る前に、服についた花粉を払い落とす
・外で着ていた服から部屋着に着替える
・うがいや洗顔をする
自宅で過ごすとき・窓はできるだけあけない
・洗濯物の外干しをしない
・こまめに掃除する

鼻の粘膜のレーザー治療を受ける

鼻の粘膜のレーザー治療とは、鼻の粘膜にレーザーを照射して鼻の粘膜のアレルギー反応をおこりにくくする治療法です。
ママと赤ちゃんの体調が安定している場合には、治療できるケースがあります。

お気軽に当院へご相談ください。

花粉症治療中に妊娠がわかったら……

妊娠

花粉症治療中に妊娠がわかる方は、少なくありません。

妊娠に気付いた時点ですぐに薬の服用は中止し、なるべくはやくかかりつけ産婦人科および花粉症治療薬を処方した医療機関を受診しましょう。

妊娠中の花粉症治療は当院へ!

ただでさえ体調のすぐれない妊娠中。
女性ホルモンの影響で、花粉症の症状が酷くなる方も少なくありません。

けれども妊娠中の薬による治療は、赤ちゃんへ影響を与えるリスクが高いためあまりおすすめできないのが実情です。
妊娠中はできるだけ免疫力をアップし、花粉を避けた生活を心がけてください。

妊娠中期以降は、体調や症状に応じた対処療法を取り入れることをおすすめします。

不安な妊娠中。
つらい花粉症の症状の改善、赤ちゃんに影響の少ない花粉症治療を受けたい方は、ぜひ一度当院へご相談ください。

参考資料

鼻アレルギー診療ガイドライン2023
http://www.jiaio.umin.jp/common/pdf/GL20030330.pdf

5.妊娠とアレルギー 専門医のためのアレルギー学講座 アレルギー63(5)661-668、2014(平26)https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/63/5/63_KJ00009327661/_pdf

この記事の監修者

院長よりご挨拶
武田耳鼻咽喉科 院長
武田 桃子

・埼玉医科大学医学部卒業
・日本大学附属板橋病院 臨床研修医終了
・東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科 勤務
・東京慈恵会医科大学附属第三病院 耳鼻咽喉科 勤務
・東京都保健医療公社 豊島病院 耳鼻咽喉科 勤務

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クリニック名
医療法人社団皐八会 武田耳鼻咽喉科
住所・所在地
〒354-0018 埼玉県富士見市西みずほ台1-19-5
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アクセス
東武東上線みずほ台駅西口、駅から徒歩1分。交番隣り。
駐車場
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周辺に無料で使える提携駐車場もあり。
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