【花粉症治療】舌下免疫療法のやり方と効果・費用・メリットとデメリット

「花粉症を治したい」
「花粉症を治す方法があるって聞いたけどホント？」
「噂の舌下免疫療法は効果があるの？」

1年を通して多くの方が悩まされている花粉症。
花粉症の治療といえば、流行期に内服薬や点鼻薬・点眼薬などを使用する対症療法が一般的です。

しかし、最近は“舌下免疫療法”という治療方法で、アレルギー症状を改善させることができるようになりました。

本記事では、舌下免疫療法とはなにか、やり方や効果・費用をわかりやすく解説します。
さらに、舌下免疫療法のメリット・デメリットも専門医が丁寧に説明します。

舌下免疫療法が気になる、今年こそは花粉症を改善したい方はぜひ本記事をお読みください。

舌下免疫療法とは？

舌下免疫療法（ぜっかめんえきりょうほう：sublingual immunotherapy, SLIT）とは、アレルギーの症状を緩和・改善するためにおこなうアレルゲン免疫療法の一種です。

アレルギーの原因物質を少量から少しずつ量を増やしながら投与することで、身体をアレルゲンに慣らし、アレルゲンに暴露したときにおこるさまざま症状を緩和します。

舌下免疫療法をおこなうと、アレルゲンに対する免疫や抗体ができ、アレルゲンに触れたときの身体の反応が変わります。

その結果、くしゃみや鼻水・涙などの症状の緩和が期待でき、花粉症の薬を減らすことができます。

5歳以上のこどもから高齢者まで、妊娠・授乳期間を除いた多くの方がおこなえる治療です。

舌下免疫療法のやり方

舌下免疫療法は効果の期待できるアレルゲンエキスを継続して年単位で服用する治療方法です。
スギ花粉であれば、花粉症の飛散時期を避け、6月~11月下旬ごろが治療開始の適正時期となります。

舌下免疫療法の薬は飲み込まず、舌の下に薬を入れ自然に溶けるのを待ちます。

舌下免疫療法をおこなう場合は、次のようなステップで治療をすすめます。

STEP1	問診と血液検査または皮膚テストで、アレルギーの原因（アレルゲ ン）を調べる
STEP2	医療機関で薬を処方してもらう。初回の投与は医療機関でおこなう。
STEP3	1日1回舌の下に薬を投与する（時間はいつでもよい）
STEP4	投与後は1～2分、もしくは薬が完全に溶けるまで舌の下に入れておき、その後飲み込む
STEP5	投与後5分はうがいや飲食を避ける
STEP6	投与前・投与後2時間は入浴や飲酒・激しい運動をしない。
STEP7	2回目以降は、ステップ3～6を年単位で自宅でおこなう

投与する薬（アレルゲン）は、スギ花粉症は1～2週間ごと、ダニアレルギー性鼻炎では3日～1週間ごとに投与する量を増やします。

※なおWHO（世界保健機関：World Health Organization）が推奨する、舌下免疫療法の治療期間は3年以上で、治療が完了するまで月1回程度の受診が必要です。

舌下免疫療法の効果

舌下免疫療法の効果は、約80％程度の患者さんで認められます。

スギやダニが原因の鼻や眼の症状だけでなく、咳や喘息などに対しても効果が期待できます。

またこどものアレルギー性鼻炎では、将来喘息を発症する割合が減ることも報告されているのも注目すべき効果といえるでしょう。

舌下免疫療法の治療期間

舌下免疫療法の治療期間の目安は3～5年間で、毎日おこないます。
実際の患者さんの中には、それよりも長い期間治療をおこなっている方もいます。

内服薬や点鼻・点眼薬のように、すぐに症状を軽減するのではなく、時間をかけて体質を改善する治療方法のため時間がかかってしまうのです。

もし途中で治療をやめると、また初めから治療をやり直すことになってしまいます。

自己判断で中断したり、再開したりすると副作用の危険がありますので、舌下免疫療法は必ず医師の指示のもとおこなうようにしましょう。

舌下免疫療法の費用

舌下免疫療法には、健康保険が適応されます。

1回目の受診では検査などを含め、4,000～5,000円（3割負担の場合）の費用がかかります。 

その後の定期的な通院にかかる費用は、診察・治療費と薬代と合わせて1ヵ月あたり2,000～3,000円（3割負担の場合）です。

舌下免疫療法のメリット

舌下免疫療法には、次の3つのメリットがあります。

【メリット１】8割の人が症状が花粉症の改善を自覚する 【メリット２】副作用が少ない 【メリット３】自宅でおこなえる

順に解説します。

【メリット１】8割の人が症状が花粉症の改善を自覚する

過去の研究では、正しく舌下免疫療法をおこなった患者さんの8割が花粉症の改善を自覚しています。

スギ花粉症は自然によくなることが少ない病気ですが、アレルゲン免疫療法は症状の改善が見込める唯一の治療方法なのです。

【メリット２】副作用が少ない

舌下免疫療法はアレルゲンを注射しておこなう皮下免疫療法と比べて、アナフィラキシーなどの重篤な副作用がおこりにくいです。

ごくまれに副作用がおこったという報告がありますが、舌下免疫療法でのアナフィラキシーの報告は国内で数例程度（0.1％未満）で、現在までのところ死亡例の報告はありません。

軽度な副作用として、以下が報告されています。

・口の中のかゆみ ・口の中の腫れ ・のどのイガイガや違和感 ・耳のかゆみ

副作用の多くは、服用後30分以内に出現することが多いです。

さらに、治療を始めたばかりの時期や薬を休んでいて再開した直後なども副作用が出たという報告があるため注意が必要です。

【メリット３】自宅でおこなえる

舌下免疫療法は初回のみ医療機関でおこないますが、2回目以降は自宅でおこなえる治療です。

1日1回、ご自身のタイミングで服用できるので、仕事や学校、家事や子育てに忙しい方でも続けやすい治療です。

舌下免疫療法のデメリット

舌下免疫療法には次のデメリットがあります。

【デメリット１】治療期間が長い 【デメリット２】治療対象が限られる 【デメリット３】副作用がおこる可能性がある

順に解説します。

【デメリット１】治療期間が長い

WHOで推奨される舌下免疫療法の治療期間は3〜5年となっています。

実際にはそれより長く治療を継続している患者さんもいて、治療期間が長いことがデメリットの1つです。

【デメリット２】治療対象が限られる

2024年時点で、舌下免疫療法の効果が期待できるのは“スギ花粉症”と“ダニアレルギー性鼻炎”に限られています。

【デメリット３】副作用がおこる可能性がある

舌下免疫療法は副作用が少ないとはいえ、全くおこらないというわけではありません。

舌下免疫療法でおこりやすい副作用と頻度は、以下の通りです。

5％以上	口の中のかゆみ 口の中やまわりのむくみ・腫れ 口の中の不快感 口内炎 のどの違和感・不快感 かゆみ
1～5％	のどの痛み 鼻水 涙 鼻づまり
1％未満	吐き気・嘔吐・腹痛・下痢 蕁麻疹 咳

なお舌下免疫療法で副作用をおこすリスクが高いのは、次に該当する方です。

・舌下免疫療法の製剤でショックを起こしたことのある方 ・喘息の方 ・悪性腫瘍や免疫の病気の方 ・口の中のキズや炎症がある方 ・ステロイドを使用している方

舌下免疫療法が気になる方は当院へ相談を！

舌下免疫療法は、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎を治す唯一の治療方法です。

従来の花粉症の飲み薬や点鼻・点眼薬による治療は、一時的に花粉症のつらい症状を抑えるだけで、花粉症を治すことはできません。

「花粉症を治したい」

「つらい症状から解放されたい」

という方には、舌下免疫療法はおすすめの治療方法です。

つらい花粉症を治したい方は、ぜひ一度当院へご相談ください。

＜参考文献＞

アレルゲン免疫療法の手引き 日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/allergen_202101.pdf

スギ花粉症における アレルゲン免疫療法の手引き（改訂版） 日本アレルギー学会https://www.jsaweb.jp/uploads/files/sugi_tebiki16_honmon.pdf

鼻アレルギー診療ガイドライン 2020年版（改訂第 9 版）日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会https://allergyportal.jp/documents/bien_guide_2021.pdf

鼻アレルギー診療ガイドラン　‐通年性鼻炎と花粉症ー　日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会http://www.jiaio.umin.jp/common/pdf/GL20030330.pdf